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旧大北農協第二倉庫

知人の紹介で村の職員に案内してもらい、松川村の旧大北農協第二倉庫の見学に行ってきました。1992年に村が農協から購入し、現在建物の敷地は防災公園となっています。元々はコの字型に3棟の建物があったようですが、現存するのは北側の1棟のみで、民俗資料等の倉庫として利用されています。蔵造りの外観だけでなく、洋トラス組みの屋根が特徴的な内観も美しく、是非残したい歴史的建造物です。

2009年に村が実施した耐震診断の結果、耐震工事に6000万が必要として村は解体の方針を示していました。しかし、住民から保存を望む声があり、また、工法の見直しで工事費を1/3程度に軽減できる見通しとなりましたが、一方で防災公園内の建物の安全性を危惧する住民もいます。今年になって村長が国の登録文化財に指定した上で保存する方針に転換したことから、解体か保存かで議会で議論になっています。

歴史的建造物はその地域の人々の暮らしと密接に関わっています。そしてその建物を通して過去の記憶が呼び起こされ、歴史と文化が次代に引継がれていくのだと思います。したがって「価値があるから残す」のではなく、「残すことで価値が生れる」のです。この倉庫は建物そのものの価値だけでなく、村の田園文化の象徴でもあります。他の事例に比べれば村の所有物でハードルが低いこともあり、なんとしても残す必要があるでしょう。

国の登録文化財の指定は一つの手段ですが、それだけで全てが解決する訳ではありません。屋敷林等を含めた田園風景と歴史的建造物をどのように位置づけ、どう保全活用していくかという明確なビジョンを示すことが求められているのだと思います。都市化の進んだ安曇野市に比べ、松川村は最も安曇野らしい景観が残っている地域と言えるかもしれません。そういう意味では今後の試金石でもあり、村民を交えて十分議論し、景観条例の策定等の具体的なしくみづくりへとつながっていくことを願っています。

 

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